どうも。
いよいよブログを更新するネタが底をつき、ピンチに陥っている野川太郎です。
ですので、今日は久しぶりに主観的映画評論シリーズと題しまして、るろうに剣心 the finalを主観的に評論評論していきたいと思います。
先に結論から申しますと、普通におもしろかったです。実写映画は大失敗が多い中、このるろうに剣心シリーズの完成度の高さは目を見張るものが常にありました。今作も完成度は非常に高く、実写ならではの安っぽさや脚本破綻は皆無で、映画館で見る価値ありの作品だと考えています。
けれど、不満点もそれなりにある作品でもあります。
ですので、ここからはネタバレを含みますので覚悟のある人だけ閲覧をお願いします。
①雪代縁の悪役力の低さ
私の不満点はまさに、るろうに剣心の映画の最後の悪役である雪代縁です。役者の役作りや彼がこなすアクションのクオリティの高さは認めます。とてもすばらしいです。けれど、悪役としての魅力が前作に比べて明らかに落ちている所が私の不満点の一つです。
これは雪代縁というキャラ設定に問題があるからだと推測します。
今までのキャラクターは常に新政府に対するアンチ勢で構成されていました。幕末の争いに魅入られ、明治の世に馴染めない者、明治政府に迫害を受けた者。皆、明治政府に対するアンチ勢であり、明治の世になって平和を脅かすことしかできなかった者たちとの闘いでした。
るろうに剣心の魅力はそこにあると私は常に思っています。
好きでもない人斬りをし、罪にまみれながらも明治の世を作り出したにも関わらず、平和の世を乱そうとする者と戦う流浪に剣心がそこにいます。
今作の雪代縁も幕末の被害者の一人ですが、彼が望んでいる物はただの復讐です。しかも、それは明治政府にではなく、緋村剣心に対してだけです。
今までのキャラクターには野心がありました。悪役たちの魅力には野心が常に付きまとうもの。特に前作に登場した志々雄誠には政府に対する強い復讐心と同時に弱肉強食という独自の行動理念に沿って、明治政府転覆と自分がトップになるという強い動機がはっきり表れており、最高の悪役として登場しました。
けれど、雪代縁はあくまで復讐のみ。彼には野心など微塵もないのです。剣心に対する復讐心だけで中国マフィアの頂点に上り詰めたことはいいですが、志々雄誠のように復讐を超えた先の野心、目標的なものが彼にはないのです。
悪役として、彼のようなキャラクターははっきり言って弱い。悪役キャラクターとしての魅力が決定的に不足しているのです。
②雪代縁とその部下たちの悪役的存在感の薄さ
雪代縁の悪役力の低さと同様にその手下たちの存在感の低さにも驚かされます。前作の志々雄の例を挙げるなら、彼の他に濃い部下たちが複数人居ました。全員有名人のキャストと存在感溢れる衣装合わせと役作り。画面が全く飽きないすばらしい演出でした。
けれど、雪代縁たちの部下はそれぞれ独特の戦い方を演出していたことは良かったのですが、彼らのバックボーン(過去の記録等)が特になく、しかも全員黒づくめで逆の個性を薄める結果となってしまいました。
つまり、手下たちがどれだけ頑張ってもモブキャラ状態であり、悪役力の足りない雪代縁しか目立っていない状態になったのです。
その結果、主人公と愉快な濃いメンバー vs 雪代縁と目立たない手下たちというつまらない構図になってしまい、主人公サイドがかなり有利なイメージがして感情移入することが難しかったです。
③テンポの悪く陰鬱な展開
今作のテーマは復讐と贖罪であると私は考えています。このテーマ自体、私は大好きなジャンルであり、主人公である剣心が雪代縁にしてしまった過去と向き合い、どう対処するかが描かれています。
けれど、雪代縁は復讐のみを目的とし、剣心およびそれに関わった人や物をただ壊そうとするだけで何も見えてこない。野心がなく、ただ無残にゲリラ的戦法で町を壊していく。映像美はとても迫力があるのですが、大義がないので映像的なおもしろみが減少してしまうことが問題点。
生々しく描くわりに、主人公が雪代縁に近づくまでかなり間があり、陰鬱な展開で話のテンポが遅いのは失敗ではないかと個人的に思います。
テンポが悪い理由として、剣心の過去に迫った追憶編のストーリーをダイジェスト形式で公開したことも挙げられます。
the beginingのネタバレをダイジェスト方式で公開したことで、雪代縁の行動原因や剣心の葛藤を理解させるには必要だったと思います。けれど、次回作をここまでネタバレして大丈夫だったのか疑問に思う所もあります。
また、剣心が縁と出会うまでが本当に時間がかかったこともあり、テンポの悪さを否定できませんが、私のように長い映画に免疫がある人はきっと大丈夫だと思います(笑)
④序盤の戦闘シーンがいらない
未だに疑問が残るのが最初の戦闘シーンです。雪代縁は前作の悪役である志々雄誠に武器を売買した容疑がかけられ、列車から逃亡・戦闘するシーンがあったのですが、その戦闘シーンがとてもすばらしかったのです。
けれど、結局自ら捕まってしまうという結果になり、何がしたかったの? かっこつけたかったの? と思わざるを得ませんでした。とてもいいシーンなのですが、戦闘シーン自体に意味がないということが起きました。
また、元新選組の斎藤一と言うキャラクターがその場にいたのですが、本当に何もしないのです。タバコを吸ってカッコつけているだけ。正直不愉快でした。
⑤サプライズゲスト・瀬田宗次郎について
原作展開にはない、前作で主人公を苦しめたキャラ、瀬田宗次郎がサプライズとして登場し、剣心と共闘するという熱い展開になりました。
雪代縁編自体があまり評判がよくなく、盛り上がりに欠けると判断したのでしょう。サプライズとして彼を起用したことはうなずける部分はあります。
けれど、私の個人的な意見としては、寒い が感想でした。
本来なら熱い展開です。けれど、ただでさえ悪役たちが存在感の薄い状態にもかかわらず、これ以上主人公サイドを濃くしてもしょうがないだろうというのが持論です。
むしろ、敵として登場し、剣心に試練を与える展開の方がおもしろかったかのではないだろうかと思いました。
悪役たちの存在感が圧倒的で、あまりに強すぎて対処できないという状況でのサプライズ登場ならどれだけ熱い展開だっただろうかと思ってしまいます。
このシーンは人によって意見が分かれるところだと思います。
⑥剣心と雪代縁との一騎打ちが意外と凡庸
2人の一騎打ちは確かに見ごたえはありました。ワイヤーアクション等を駆使して早い剣術アクションは決して悪くはないのですが、ずば抜けて面白いかどうかに疑問符がつきます。
2人とも同じような剣術にしか見えず、特に雪代縁のアクションに個性を感じませんでした。ただ早い激しいアクション。それだけという印象。瀬田宗次郎のような俊敏すぎる動きや志々雄誠のような炎を発しながら重い一振りをする剣術とも違う。斎藤一のような必殺技を出すわけでもない。
印象に残るべきアクションの迫力でしたが、アクション自体がおもしろくありません。
実写版るろうに剣心のアクションに飽き始めてきた私ならではの感想なのかもしれませんね。
⑦斎藤一と相楽左之助の活躍シーンが圧倒的に足りず、まったくおいしくない
齋藤一はとにかく動かない。アクションをする気がないのがバレバレでどうしようもありませんでした。大量に表れた敵を一人で相手にするシーンがあるのですが、大事なそのシーンは見事にカットされ、無事脱出できましたという説得力のない結果だけ描かれていました。
左之助に関しても、活躍シーンが非常に少なく、途中で雪代縁にぼこぼこにされ、フェードアウト。最後の戦闘にちょっとだけ現れるだけという寒い演出になってしまいました。
以上が本作の不満点です。書いていてびっくりしましたが、こんなに不満点があるんだなと自分自身驚いています。
ですが、娯楽映画として楽しめる作品であることは確かです。
アクションのクオリティは確実に高いですし、実写映画特有の安っぽさはまったくありません。映画としての完成度は高いものだと私は思います。
前作やアニメと比べようとはせず、皆様にはこの映画を純粋に楽しむことを私は望みます。
今日は以上です。ご視聴ありがとうございます。
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