どうも。
最近、映画館に足を運ぶ機会がなく、勉強ばかりしている男、野川太郎です。
今日は、地元で公開していた映画【アルプススタンドのはしの方】について語っていきます。
簡単なあらすじ
この物語は野球映画ではありません。
高校野球部をスタンドの端っこで応援する負け組たちの群像劇です。
・元野球部でプライドばかり高い男子・藤野
・演劇部で野球のルールが分からない女子二人、安田と田宮
・勉強しかできないコミュ障気味の女子生徒で帰宅部の宮下
・気合と根性だけで野球部をひたすら応援する教師、厚木先生
・ブラスバンド部で勉強もできる唯一の勝ち組キャラクター久住
メインキャラは上記となり、基本的に野球描写はほとんどありません。
本作は5回表から9回裏までの試合終了までの野球の観客席で応援する負け組たちの物語
私の言う負け組とは【部活で活躍することができなかった】と言う意味です。
野球で甲子園を目指す学園部活物ではなく、観客席で繰り広げられる少年少女たちの苦悩の物語です。
私個人の本作の評価
結論から言えば、本作は【傑作】に入ります。
【霧島、部活止めるってよ】に匹敵する映画と思います。
ありきたりな学園物ではなく、本作もまたリアルを追及した映画だからです。
登場人物たちも実際に存在していそうなキャラクターでリアル
まるで、実話を基にした作品であるかのようなインパクトを感じる本作。
しかも、舞台背景のほとんどがベンチスタンドで完結している異色の作品。
では、私が評価した理由をいくつか挙げていきます。
①演劇部二人の物語からスタート
演劇部の宮下と田宮が野球を応援する所からスタート。
序盤から、二人の野球応援の面倒くささを描いています。
この二人から発せられる文化部感がとてもいいのです。
文化部と体育会系は基本的に分かり合えないのが現実
野球部の応援に強制的に来させられている生徒たちなら理解できるでしょう。
文化部と運動部との溝
本作ではスタンドの端っこに二人の登場人物を位置させたことで表現している演出が見事です。
そして、野球応援することに意味を見出せない演劇部の二人を描いたことでその溝をさらにうまく表現していました。
また、演劇部の二人は運動に関して全くの素人ゆえ、野球のルールを知らないのです。
そこがまたリアルで面白い。
見事に現実的な描写を描いていました。
②元野球部の登場
野球のルールが分からず、球場から飛びかう野球単語。
それを理解できないリアルな二人の前に、またリアルな元野球部の登場です。
彼は元野球部であり、二人に野球のルールを説明します。
けれど、女子二人は理屈臭い内容に微妙な反応。
「そういうことだったんだ。ありがとう!」にはなりません。
そのシーンがまたリアルで、元野球部と演劇部の間に微妙な溝があります。
また、元野球部は観客席で味方である野球部部員に対し、説教を始めるのです。
このシーンはとても痛い描写です。
それは彼が元野球部だからです。
野球部は日本の部活動において頂点に君臨するスポーツ。
※野球至上主義
野球部は大体ほかのスポーツもできるので、野球部にはある種のブランドがあります。
けれど、彼は野球を途中で諦めた生徒。
だからこそ、過去の栄光に縋りついて知った被って説教をする。
これは、運動部引退後にも部活に顔を出して先輩ズラする生徒と同じ状態です。
この元野球部の男子は現実に存在するキャラクターを体現した存在であると言えます。
③野球応援に命をかける熱血教師
彼らの前に一人の教師が現れます。
その教師は熱血漢で、声が完全にかすれても野球をこよなく愛する性格。
それゆえ、応援に力が入っていない主人公たちに活を入れます。
けれど、主人公たちにとって野球応援に意味を見出すことができません。
この脳筋全開の教師もまたかなりリアル。
絶対に一度は見たことのある教師ではないでしょうか?
※私はこういう教師が大嫌いです(笑)
気合と根性だけで行動しているこの典型的な脳筋教師。
彼と主人公たちの溝がそのシーンだけでいかに深いかを示しているシーンです。
④勉強しかできないコミュ障気味の帰宅部の女子高生
このキャラクターは陰キャコミュ障前回の勉強だけができる典型的な女子生徒。
クラスに一人は絶対にいるような生徒です。
彼女は主人公たちとは少し違い、友達もいないボッチで野球部のエースに恋い焦がれている内気な女子生徒です。
そのため、スタンド外にいることが多く、ベンチに座ることをあまりしません。
彼女は学校全体に対する溝が深いキャラクターです。
この根暗で内気な女子生徒と主人公たちとの距離も決して近いわけではありません。
野球部のエースにだけ興味のなる内気な彼女と応援すら怠い主人公サイド。
この目的が全く相いれない彼らですが、部活動的な負け組の枠として描かれている。
負け組同士が決して仲間ではないことを示しているシーンは実に生々しい。
⑤勝ち組のブラスバンド部 VS 帰宅部の内気な女子生徒
ここで、唯一の勝ち組キャラクターの女子生徒が登場します。
ブラスバンド部、その中心的存在で容姿端麗。チームの中心的存在です。
しかも、模試試験で帰宅部女子よりも成績が上。
こういう完璧な女子生徒もまた、学校に必ず一人はいるはずです。
勉強もでき、しかも部活動でも活躍できる生徒。
ここで目に見えないマウンティングが発動します。
ブラスバンド部の真ん中の女子生徒と勉強しかできない帰宅部女子生徒。
部活動をしながら勉強もできる生徒と勉強しかしていない生徒。
皆さんはどちらを評価するでしょうか?
当然、前者でしょう。
二人には因縁めいた関係であり、帰宅部女子はすべてにおいて彼女に敗北するのです。
この目に見えないマウンティング描写を球場のスタンドで行うのですから、強烈です。
友達・部活動のメンバーに囲まれているブラスバンド部の真ん中女子。
独りぼっちで挙動不審な行動しかできない女子。
この二項対立は【霧島、部活止めるってよ】を彷彿とさせます。
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この陽キャと陰キャの二項対立で描かれているもう一つのテーマであり、残酷な答えが描かれています。※私の言っている陽キャは騒がしい連中のことではありません。
それは、溝や壁を作っているのはいつも陰キャ側と言う真実です。
性格のいいブラスバンド部の真ん中女子は性格が悪いわけではありません。
また、帰宅部女子も悪い女の子でもありません。
2人が対立する理由は、見えないマウンティングです。
けれど、それを気にしているのは陰キャの帰宅部女子の方だけなのです。
つまり、分かり合えない壁を作っているのはいつも陰キャの方
※性格の悪い陽キャは別
この真実に対しては異論反論はあるでしょう。私はそれを否定しません。
けれど、これが現実です。
壁を勝手に作ってしまい、勝手に苦しんでいるのは帰宅部女子の方。
この真実を描いてしまった本作はある意味罪深い!
これは傑作になるしかない映画です!
⑥勝ち組ブラスバンド部女子の悩み
けれど、勝ち組女子のキラキラ描写だけを描くほど、この映画は優しくはありません。
彼女は学校の真ん中、応援する生徒たちの中心。
だからこそ、憧れと憎しみの狭間にいる苦しみがあります。
彼女は一生懸命野球部を応援するために演奏に力を入れます。
けれど、音楽系の部活動あるあるで、それに反発する生徒も現れます。
その反発は次第に彼女を圧迫していきます。
この描写では、すべてを持っている生徒独特の悩みを描いており、共感できるシーンです。
本作はどのキャラクターに対しても手加減をしません。
負の部分を徹底的に示す、しかもそれを野球場の外野で。
このセンスはまさに絶妙であり、控えめに言って面白い。
つまり、この映画で言っているもう一つの真実は【勝ち組なんていない!】と言うことです。
野球の応援を通して、皆が悩み、分かり合えずに苦悩する。
その苦しみは等しく平等に与えられているということ
学生たちの本質を突いた劇薬的な映画です。
⑦演劇部の真実と闇
私は演劇部をわざと負け組の枠として位置づけました。
これには理由があります。
まず、演劇部の二人は単純に野球の興味がない代表例的なキャラクターではないということです。
実は序盤から、友人である二人にも見えない溝がありました。
その伏線は小さいながらも細かく描写され、そしてその伏線回収がありました。
彼らの内の一人が演劇発表当日にインフルエンザになり、公演中止になっていたのです。
これは野球部に例えるなら甲子園当日にコロナウイルス陽性者がチーム内に出たことと同じくらいの衝撃です。
演劇部二人は勝負して負けたのではなく、勝負できずに負けていたのです。
一方はその罪悪感を抱きながら、もう一方は勝負できなかった悔しさを抱きながら野球応援をしていたという落ちでした。
※野球の球場で、することではありません(笑)
ですが、これもまた現実にある出来事です。
誰か一人のせいで大会に出場できない。
けれど、その人を責めることはできない。
このメインキャラクターの二人こそ、真に闇を秘めていたのです。
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総括
実は本作を見たのは投稿から1年以上前ですべてを覚えているわけではありません。
そのため、覚えていないこともあり、語りたくても語れないシーンもたくさんあります。
この投稿では、彼女らがどうなっていくのかはあえて伏せることにします。
ですが、本作は高校生以上の年齢層に向けた傑作映画であると私は考えています。
ぜひ一度、ご視聴することを強くお勧めします。
今日は以上です。
ありがとうございました。
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