どうも。
大学時代、映画と海外ドラマばかり見ていた野川太郎です。
今日は昭和をテーマにした隠れた名作【狼少女】について語っていきます。
ALWAYS 三丁目の夕日よりはるかに秀作
先に言わせてください。
この映画は昭和の懐かしさと同時に残酷さ(現実)を素直に描いた作品です。
昭和というテーマであるALWAYS 三丁目の夕日のせいで、埋もれてしまった映画でもあります。
ALWAYS 三丁目の夕日は完全な一般大衆向けに作られた【綺麗ごと映画】と私は結論。
昭和の汚い部分を前面に隠して、美しいところだけを視聴者に見せる卑怯な映画ともいえるでしょう。
一方、狼少女は昭和のリアルをCG無しで描いてしまった傑作です。
もし、昭和を堪能したいのであれば、作り物感全開のALWAYS 三丁目の夕日ではなく、本作を強くお勧めします。
※ただし、心が抉られる可能性があるため、娯楽を純粋に楽しみたい方はALWAYS 三丁目の夕日を
昭和あるある映画
この映画の評価ポイントは昭和あるあるをふんだんに盛り込んだことです。
貧困ただよう団地のシーンをはじめ、クラスのガキ大将、その子分、見た目からの貧乏少女、お金持ち雰囲気全開の少女など、昭和テイストがぐいぐい詰め込まれています。
そして、物語のキーとなるのは見世物小屋と狼少女
昭和の暗黒面を主人公である一人の少年視点で描いた物語となっています。
少年にとって、昭和の現実を見せつける。とても残酷であり、昭和って素敵なんて思考はありません。
主人公たちの設定が完璧
主人公は団地にする普通の少年。
今は絶滅危惧種であるクラスのガキ大将とその子分にいじめを受ける日々を送っています。
ですが、クラスで一番忌み嫌われているのが、貧乏全開で身なりからしてとても臭そうな女の子。
見た目からして悲壮感全開の小学生の女子です。
その姿はまるで「狼少女」と言わんばかり。
主人公はその子を気に欠けますが、彼女を救うだけの力はありません。
そんな時、学校に転校生が現れます。
転校生は身なりが整っており、容姿端麗の女子。典型的なクラスの人気者タイプ。
このお約束すぎるキャラクター設定を子役たちは見事に演じ切ってくれました。
昭和の貧困が描かれた作品
この映画のテーマは貧困です。
主人公も決して裕福ではありません。
ですが、狼少女の見た目をした女子生徒はもっと深刻です。
私は男なので、第二次性徴での苦労は声変わりくらいですが、女性はそうもいきません。
狼のような見た目の貧困少女はもっと深刻です。
貧困と卑屈な性格を理由に下着を購入することができないのです。
この描写がとてもリアル感がでています。
貧困とコミュ障が重なり、クラスではいじめられている貧困女子。
実の母親に相談できない所など、とても現実的に描かれています。
現代も、女性が生理用品が購入できないという社会問題がありますが、このようなテーマをこの映画は見事に描いています。
このあたりは私が説明するより、映画を視聴した方がいいと思います。
ノスタルジックでお約束的な展開
この時代にはまだ家庭用ゲーム機は普及していません。
また、美しい夕日を見ることもありません。なぜなら、団地だらけで夕日を遮ってしまうから。
だから、子供たちは放課後外で一生懸命遊んだのです。
この状況の中で、転校生のヒロインが行動に移します。
狼少女の見た目をした貧困女子を救おうと主人公に提案するのです。
勝ち組オーラ全開のヒロインとどちらと言えば負け組の主人公が協力するお約束展開。
貧困女子をいじめていたガキ大将とその子分をうまく誘導して、落とし穴の落とす。
そして、落ちた二人を上から眺める3人。
この展開は一見ベタではありますが、この令和の時代に落とし穴が登場する映画はほとんどないでしょう。
落とし穴は昭和ならではの遊びです。だからこそ、そこに価値があるのです。
主人公とヒロイン、貧困女子の3人の友情が深まっていく過程もなかなか素敵です。
また、ガキ大将たちを倒すという昭和ならではの夢をかなえてくれる映画ですから、落とし穴のシーンはかなりすっきりします(笑)
楽しい時間の後の昭和の絶望
この映画は悪がきを落とし穴に落とすところが主人公たちの絶頂期です。
この後に待っているのは、主人公が絶望に堕ちるシーンです。
主人公は見世物小屋に興味を抱きます。
特に狼少女と呼ばれる見世物に興味を抱いた主人公。
狼少女は貧困女子だという噂を聞き、闇の楽しみである見世物小屋に向かう主人公。
そこで見たものは、狼のように振る舞うヒロインだったのです。
そう、お金持ちで容姿端麗だったヒロインこそ狼少女だったという落ち。
ここで、主人公は今まで積み上げてきた幸福が一瞬で崩れるのです。
つまり、この映画のタイトル「狼少女」には二つの意味があったことが分かります。
・狼の姿をした少女
・身分を隠すために嘘をついていた少女
ヒロインは身分を隠すために数多くの嘘をつき、友人たちをうまくだましていました。
結論として、クラスで一番の負け組はほかでもないヒロインだったという展開になりました。
ヒロインの両親設定が不明確ですが、私の見る限りでは、両親は存在せず、見世物小屋の仲間と一緒に各地を転々としながら狼少女として生きていたということです。
ここがまさに昭和の闇を描いた作品と言えます。
綺麗ごとで終わる大衆向け映画ではない所が私が名作と言える理由です。
最終的には・・・
この映画はヒロインが見世物小屋の移動に合わせてこの町を去ることになります。
ヒロインは自身の身分がばれてしまい、クラス中から総スカンを食らってしまう。
そこの希望はありません。
狼少女である彼女は満足に学校にも通わせてもらえない状況だからです。
転校を常に繰り返し、その都度嘘で自分を塗り固めていた小学生生活を送っていることがよういに想像がつきます。
最後はお約束すぎる展開ではありますが、主人公や貧困女子などヒロインと深くかかわったキャラクターたちが手を振ってヒロインを見送るシーン。
一応感動シーンとして描かれていますが、私は別の考察を持ちました。
この時代にはスマートフォンはありません。
つまり、一度離れると永遠にお別れになるのです。
彼らの見送りシーンはまた会おうではなく、もう会えないことを意味しています。
ましてや、見世物小屋で全国を渡り歩いている少女に連絡を取ることの不可能。
この映画はどうしようもない昭和を闇を解決する映画ではなく、どうしようもないことはどうしようもないというテーマを含まれていると私は考察しました。
貧困女子の問題も解決していませんし。
この映画は救いようのない系の作品です。
総括
昭和は幸せな時代でしたなんてお花畑にする映画がある一方で、こういう現実が昭和にはあったんだと現実を教えてくれる映画もあるということです。
私は三丁目の夕日を見た時、一種の嘘くささを感じました。
そんなときにこの映画を見つけ、試しに視聴した結果、心が抉られるような絶望と昭和とは何かを教えられました。
私はどちらかの映画を見るよりも両方とも見るべき映画だと思います。
個人的には狼少女という作品が圧倒的に好きです。
今日は以上です。
ご視聴ありがとうございました。
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