どうも。
最近ドローンに興味を持ち始めた野川太郎です。
今日は映画版【ソロモンの偽証】の前編・後編を同時に考察します。
大まかなあらすじ
とある中学校で一人の少年の遺体が見つかりました。
警察は自殺と判断しましたが、一通の密告の手紙により状況は一変します。
自殺した少年は実は殺害された可能性が出てきたのです。
警察は自殺と判断し、調査は終了しますが、マスコミや学校関係者たちは不信感を抱きます。
主人公の女子生徒は大人が真実を調査しないなら、自分たちで調査する。
つまり、【学校裁判】を開催しようと奮闘する物語。
そして、少年の死は自殺か殺人か?
前編・後編にした理由
本作は前編後編合わせて4時間以上もある映画です。
前編では、主人公の女子生徒が学校裁判をするまでの動機付けする内容。
後編では、実際に生徒たちだけで現実に近い形で裁判を開廷し、真実を見つけ出す。
一見すれば、前編後編にするのではなく、一本の映画にするべきだろうという意見があると思います。
私も最初はそう思いました。
けれど、私は視聴した後その考えを変えました。
それは本作をリアルに描くには、前編である動機付けをじっくり描く必要があったのです。
本作は大人役はベテラン勢で抑え、メインのキャラクターである子供たちはその当時は比較的無名な役者を起用しています。
私はこのキャスティングが実に素晴らしかったと思います。
有名子役をあえて使わなかったことは本作の質を高めたと考えています。
この映画は子供たちが学校で裁判を開催するという衝撃的な内容です。
けれど、裁判のやり方は本物に限りなく近い方法で行います。
中学3年生たちが実際に裁判ができるだけの行動力や動機、つまり説得力のあるキャラクターに仕上げる必要がありました。
人気俳優中心で物語を作ろうとすると、【嘘くささ】が出てきます。
例:金八先生の授業で椅子から立ち上がって発言するシーンなどの現実的ではない嘘くささ
本作の生徒たちはあえて地味目のキャスティングをすることでリアリティが増し、学校裁判を本気で起こそうとする説得力を視聴者に与えることができました。
※学生が裁判やったぜすげぇだろ俺たち感がまるでないということ。
よって、前編で学校裁判をするだけの動機づけを徹底的に描くには2時間は必要だったということです。
どこら辺が面白いのか(ネタバレなし編)
本作の面白さは、生徒たちのリアル感や一人の男子生徒の死によって日常が変化し、一通の密告手紙によって人生を狂わされる描写がとても生々しいことです。
その描写がとてもリアルで、現実にもこのようなことが起こるのではないか?という恐怖を与える作品であることに私は評価をしました。
また、本作は先が気になる系のサスペンス要素もあり、少しづつ謎が明らかになっていくまでの興奮もたまりません。
個性的でかつ現実感のあるキャラクターたちも魅力の一つ。
テンポはもちろん遅めの作品でありながら、決して退屈することなく、私は一日で本作を視聴することができました。
では、ここからはネタバレありで各シーンの考察・感想を述べていきます。
警察は自殺と判断・主人公たちはそれに反発
先に結論を言えば、この事件の解答は【自殺】です。
私もこの落ちは読んでいました。
本作は主人公と刑事である父親の対立から始まります。
警察官である父親は決して堕落した警官ではありません。
よって演出的に考えて、警察は決して無能に描かれてはいないのです。
つまり、警察が最初に出した結論【自殺】がすでに答えだったということです。
本作の問題点はそこにあると私は考えます。
自殺か殺人か?という謎を引っ張る演出ですが、サスペンス慣れしている人からすればこの落ちは読みやすかったはずです。
個人的には【大きなどんでん返し】を期待したかったです。
けれど、本作はサスペンス要素よりも人間ドラマに焦点を当てた作品です。
緻密に作られた犯罪計画的な要素は本作では不足。
その代り、一人の少年の死を生徒たちが最後まで追求する人間模様が実に面白い。
本作はサスペンス映画というより、人間ドラマ映画の作りとして完成しています。
警察は自殺という結論だけだし、それ以上調査しようとしない。
その結果、主人公たちが動かざるを得なかった。
学校裁判をするには十分な理由。
警察は結論しか出せない。事件性がない以上追及できないのが現状です。
生徒たちは結論だけ出されても納得できない。
この解離的な現象が本作の魅力と言えます。
一通のはがきによって多くの人が不幸になる
本作のキーは【少年の死】と【一枚のハガキ】です。
一枚の手紙により、多くの人が不幸になっていく過程がとてもリアルで同時に残酷でした。
手紙の内容は【不良少年がその少年を殺した】と言う内容でした。
この手紙のネタバレをしますが、この内容は嘘です。
2人の少女が不良少年たちに暴行され、嘘の手紙で不良少年に復讐しようと画策したのです。
この不幸の手紙によって、多くの不幸が生まれます。
- まず、この手紙を警察と相談し伏せていた校長先生・死んだ少年の担当教師が糾弾され辞職すること になります。
- 不良少年の家族もまた殺人のレッテルを張られ、社会的に抹殺されます。
- 手紙を出した太った女の子の方が罪の意識に苛まれ、錯乱した状態で交通事故により死亡
不幸の手紙により、多くに人間の悪意・敵意・憎悪・崩壊をリアルに描いたことはとても評価でき、作品に引き付けられました。
しかも、内容が嘘なだけでなく、少年の死は上記の人々とは直接関係ないという落ちまであります。
一枚の手紙だけですべてを破壊し、少年の死をと全く関係ないという結末は評価できます。
ソロモンの偽証の意味とは?
本作の謎の一つはその題名です。
生徒たちによる学校裁判が始まります。
この裁判では、警察では調べることができなかったこと(調査する必要がない)を徹底的に公にすることを目標にしています。
青臭さと純粋さの両方を兼ね備えた裁判であると私は考察しています。
では、一体何が偽証だったのか?
裁判が進むにつれて、嘘の手紙を出した二人の女子生徒の内、死んでいない方の女子生徒が証言を始めます。
その内容は手紙の内容が嘘だったことを告白。
ですが、ここで一つ嘘をつきます。それが
嘘の手紙を画策したのは交通事故死の方がやりました
ということです。
ここが偽証なのです。
この手紙はこの証言している女子生徒・三宅樹理こそ画策したのです。
彼女がこの証言を撤回することは裁判中することがありませんでした。
交通事故死したもう一人の女子生徒のご家族に嘘を言ったことを謝罪するのが、裁判の外で行われる始末。
ソロモンの偽証=三宅樹理という考察に行きつきました。
ソロモン=学校裁判なら偽証= 三宅樹理
また、もう一つの仮説もあります。
偽証は単純に嘘の手紙のことと捉えることも可能です。
この手紙で多くの人をかき回し、世間を騒がせた元凶でもあります。
正しい結論を私は見出すつもりはありません。
予想は予想。ご自身で考察することに意味があると思います。
少年の死はなんだったのか?
本作の一番の問題点である少年の死。
これは学校裁判を仕組んだ他校の生徒であり、友達だった少年・神原和彦が証言した。
死んだ少年・柏木卓也はすべてに絶望していた。
口先だけの教師や生徒、目に映るすべてが嘘に見えていたからだ。
これが彼の自殺願望の理由です。
この世界に絶望した彼は信頼できる友人 神原和彦 に自身が自殺することをほのめかし、友人に見捨てられた後、自殺するという内容でした。
本作の盲点だったことは、生徒たちが誰も 柏木卓也 を調査しようとはしなかったこと。
少年の死の理由ではなく、少年が自殺なのか殺人なのかに焦点を当てていたこと。
本作の見事なミスリードだと私は思います。
私自身、自殺と予想していましたが、自殺した理由を知ろうと思っていませんでした。
また、生徒たちも彼を調べていないあたりが、中学生っぽい甘い所であり、逆に現実感を与える演出であると評価します。
私が考える少年・ 柏木卓也 の死
この考察は私見です。
映画の中では、彼はとてもミステリアスで闇を抱えている少年と言う設定。
そして、周り全てが嘘に見え、誰も信用できない。だから死ぬ。という選択を取ります。
ですが、私は彼の行動から全く別の結論を得ました。
彼の自殺は【ただの承認欲求】ということです。
彼は主人公に影響を与えた人物です。
「いじめをいて見ぬふりする偽善者」
と主人公をののしった彼ですが、彼もまたいじめを見て見ぬふりをしました。
そう、彼は口では自分にはお前たちの考えが手に取るように分かっていると言いたげでしたが、彼自身何も行動しないのです。
担任の教師に対しても、俺はお前の見え透いた考えが分かっているという演出がなされています。
映画ではとても優秀なキャラクターっぽく描いています。
けれど、私から言えば、彼はただのガキ。もしくはただの中二病です(実際中学二年生)
彼にはクラスで友達はいませんでした。
つまり、彼はただの孤独だったということです。
周りの人間を見下すことでした、主人公や教師と向き合えなかったとても残念な性格の持ち主だったと私は結論を出しました。
すべての人間が嘘に見えるという理由で人はそう簡単には死にません。
孤独だった彼は、人を見下すことによってでした周りと向き合えず、そのことすら自覚していない。
彼は唯一の友人である 神原和彦 に自殺をほのめかします。
それは世間に絶望している姿ではなく、自殺する俺すごくない?風の痛いガキのやることです。
本当に自殺する人は、誰かに予告などしません。
つまり、彼はこの段階では死ぬつもりなんてなかったのではないかと私は推測します。
けれど、彼は結果的に自殺します。
その原因は唯一の友人の行動を彼が読み外したからです。
友人に残酷な命令を出し、友人が苦しめます。最低の少年です。
けれど、誤算が一つあり、友人の感情を読んでいたと思っていた彼は見事に外していたことです。
友人が試練を乗り越え、答えを出します。しかし、その答えは 柏木卓也 とは違いました。
彼は錯乱します。当然です。
俺は誰の心も読めているんだぜ、という自身のキャラづくりが崩壊したからです。
そして、彼は死んでやると言い出します。メンヘラ気質に近いただの中二病
友人は彼を見捨てて屋上を去ります。
その時、彼は本当に屋上から飛び降りてしまうのです。
このシーンには色々な解釈ができ、映画ではそのことに言及することがなかったことが残念です。
私は彼が屋上から飛び降りた理由は、自身のプライドであるお前たちのこと分かってるだぜ!キャラを失い、他にやることがなかったからだと考えています。
絶望し、死にたいではありません。死ぬこと以外に生徒たちと関わる方法を完全に失ったからです。
つまり、承認欲求
自殺でした、自分を示すことができなかった、お馬鹿な中学生を見せられ、私はかなり気分が悪かったです。
ただ、こういう系の男子は学校に必ず一人はいるものです。
このあたりもまた、本当にリアルでキャラクターの魅力が輝いている描写でもありました。
まとめ
①絶望系キャラを演じていた少年が勝手に自殺
②この自殺を利用して、三宅樹理が嘘の手紙で不良少年たちに復讐を開始
③警察は自殺と断定したが、マスコミ等がこの手紙に飛びつき、事態が一変
④殺人・隠蔽等の濡れ衣を多くの関係者が着せられ、不幸になる
⑤主人公たちが、真実だけを徹底追及し、誰も罰しない裁判を開始
⑥上記の出来事がすべて明るみになって終了
こんな感じのストーリーです。
本作はいくつかの分岐点があり、それがすべてつながったためにこの一連の出来事が起こりました。
少年が自殺しなければ。嘘の手紙など出さなければ。主人公がいじめを見て見ぬふりをしなければ等
すべての不幸が繋がってしまった結果、学校裁判を開催することになってしまった。
このプロットは本当に奥深く、個人的に満足しています。
不満点
自殺した少年が少し安っぽいことや、話が長すぎることなど。
そして、どんでん返し力が弱いかなと個人的には感じました。
ただ、不満点は人によっては違うので参考程度でお願いします。
私個人としては本作はとても楽しめたので満足しています。
今日はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
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