どうも。
気分転換に地元で遅れて上映開始した映画【アイの歌声を聴かせて】について映画考察していきます。
本作を一言でまとめると
私は本作を【学園系SF映画の皮を被ったスカイネット誕生映画】であると考察しました。
この言葉の意味は後々語っていきますが、個人的には本作を楽しむことができました。
もう少し、興行収入や知名度が伸びてもいいのではないか?と思えるほどでした。
あらすじ
超優秀なエンジニアの母を持つ主人公
多忙の母親の代わりに家事全般を行う女子高校生の主人公。
とある学校内のトラブルから「チクり姫」と呼ばれ、学校ではボッチ状態。
そんなある日、クラスに転校生がやってくる。
シオンと名乗るその転校生はいきなり、主人公に話しかけては歌を歌いだす電波っぷり。
しかし、彼女は実は試験運用中のAIロボットであり、母親が制作の責任者。
彼女が商品として採用されるかのテスト段階であり、学校内でロボットであることがばれないことがテストのクリア条件。
つまり、主人公はAIロボットシオンがロボットではない事をばれないよう生活していくが・・・
まあ、こんな感じのストーリーです。
ここからは本作の評価ポイントについて語っていきます。
本作の世界観がすばらしい
本作は近未来的な部分と現在的な部分をバランスよく取り入れた世界観となっています。
主人公たちが住んでいる家にはすでにAI機能が家電等に搭載されており、ロボットとの共存がある程度できている世界。しかし、主人公たちが住んでいる一軒家は至って普通の家。そこに近未来的なものはありません。
学校でも掃除用ロボットや部活動専用のロボットなどが配置され、しかもスマートフォンでその暴走を制御できるシステムを搭載しているにも関わらず、学校の校舎そのものや授業スタイルは現代的。
この中途半端な近未来感が個人的には評価が高く、同時に現実的にも見えました。
洋画のSF映画はすべてが近未来的でやり過ぎ感、嘘くささなどがありました。
本作は一部が近未来的になっているけれどあくまで現代の世界観を残した世界観を見事に描くことができていました。
いずれ、こんな世界が来るのだろうかと期待させる世界観でした。
また、幼馴染の天才男子生徒が学校の機械をハッキングしてヒロインをストーキング(笑)している描写があります。このシーンは本作の世界観だからできる演出であり、近未来的な部活動と現代的な部活動が混同している世界観に私は正直憧れを抱いてしまいました。
こんな世界になってほしいと・・・・
ストーリーやキャラクターは意外と王道
まず、ストーリーはAIロボットシオンによって、日常が変化し、それに伴って学校内での人間関係に影響を及ぼすという展開には目新しさはありません。
悪くもなければ極端に良いわけでもありません。
世界観は新しいですが、ストーリーの展開の仕方の根本は基本的に【サマーウォーズ】【竜とそばかすの姫】と同じ運びとなり、この展開には少し飽き始めた自分がいます。
仲たがいしていた同級生たちが最後は力を合わせて何かを成し遂げようとする感じ。
そこは視聴者の好みで意見が分かれるところ。
しかし、映画としての完成度的には特別問題はありません。
キャラクターたちも個性豊かであり、同時に王道的なキャラクター構成でもあります。
学校でボッチだけど母親がガチのエンジニアの主人公兼ヒロイン
ヒロインをいつも見守っている陰キャ系天才エンジニアの幼馴染の少年。
ヒロインを目の敵にするっカースト上位層系の女子生徒
一匹狼気取りで何でもできるモテ男(霧島部活止めるってよのキャラクターとそっくり)
柔道部の熱血・脳筋型非モテ男子
皆それぞれ悩みを抱えていますが、所詮才能あふれる勝ち組たち。
このキャラクター構成は竜とそばかすの姫に似た構図です。
※どちらがパクったかは知りません(笑)
お約束的なキャラクターたちばかりで、オリジナリティーに欠ける点はあります。
けれど、責めるほどの欠点でもないのでセーフ。
AIロボット・シオンについて
本作のキーパーソンにしてもう一人の主人公。
彼女はAIロボットでありながら、主人公をの名前を知っていたり、馬鹿の一つ覚えのように歌いだすポンコツロボットに見え、とても試験運用できるレベルではありません。
けれど、これらの欠点や疑問はすべて伏線であり、無事に回収されるのでそこは評価ポイント
また、彼女はロボットゆえに常識が無い分、基本スペックが高く、学校ではいい意味でも目立っている姿がどこか納得してしまう。本当にロボットがいたら学校生活は楽しめるのだろうか?という問いに対する一つの解答例でもあり、そこは実に興味深い・感慨深いシーンでした。
俳優たちが演じる吹き替えに違和感が全くなかった
土屋太鳳, 福原遥, 工藤阿須加たち俳優陣が声を吹替えしていますが、驚くほど違和感がありませんでした。
大ヒットアニメは大半が人気俳優を起用した映画が多いですが、同時にアニメと声が全くマッチしていないことが許せない問題でした。
けれど、本作はそのような問題は一切なく、素直に鑑賞することができました。
また、土屋太鳳演じるシオンの歌も音程がずれることなく、普通に上手でした。
本作の欠点
では、褒めるのはここまでにして、ここからは辛口タイムと行きましょう。
本作があまりヒットしなかった理由なども含めて批評していきます。
ストーリーの世界観が狭い
映像美はトップクラスに美しいがどうしても押井守映画や新海誠映画には一歩及ばず。
世界を巻き込んでる感が無く、話の大半が主人公たちの人間関係にのみ絞られているため、ワクワク感がどうしても不足してしまうことが挙げられます。
ストーリーが王道的すぎてツイスト(王道から外れる勇気)が足りないかなとも思います。
歌に頼りすぎる
AIロボット・シオンは肝心な時はいつも歌を歌ってその場をやり過します。
正直少しうんざりしてしまい、飽きてしまった自分がいました。
また、ロボット(土屋太鳳)が歌っている歌は悪くないのですが、彼女は歌手ではありません。
同じ歌をテーマにしていた【竜とそばかすの姫】ほどの歌唱力はなく、なにより歌にそれほど魅力はない点が挙げられます。(悪くはないが、ずば抜けていい歌でもない)
本作には最大の敵がいない
本作には巨悪がいません。才能ある母親の邪魔をする陰険な男性陣が二人ほど登場するくらいです。
ですが、陰険に描かれている彼らの行動を客観的に見ると、それほど間違っているとも思えません。
このモヤモヤ感は次の説明で行いますが、実質強敵がいないSF学園物ではストーリーが少し弱いことは事実です。ここは本作の欠点ではないでしょうか。
本作最大の問題点(欠点かどうか測定不明)
先に言うと、AIロボット・シオンはただのスカイネットだったということです。
これについて説明すると、
シオンは初めから主人公のことを知っていたこと。常にヒロインの幸せを願っているなどの電波行動には理由がありました。
それは主人公兼ヒロインが母親からもらったたまごっち型AIを幼馴染の天才少年が魔改造し、AIに自由意志をもたらしてしまった過去が明らかになります。
そのAIはそれから何年もヒロインの幸せのためにヒロインを監視し、思考し続け、それはネットワーク上に常時滞在することになりました。
つまり、AIというデータというよりコンピューターウイルスに近い存在(つまり、スカイネットもしくはエージェントスミス)になったことです。
そして、自身の使命であるヒロインを幸せにする方法として、AI型ロボット・シオンを見つけることに成功。ネットワーク上からそのロボットをそのAI(スカイネット)が乗っ取り、ヒロインとようやく触れることができたということです。
また、シオンが毎回歌う理由も、ヒロインが幼い時ミュージカル映画(ディズニーっぽい)を何度も鑑賞していたことからの影響であり、歌えばヒロインは喜ぶと認識したからでした。
問題は、この状況に気がついた少年少女たちがこのスカイネットを全く恐れていない点です。
シオンは本来のプログラムになかった他の機械を乗っ取ることができます。
この所業こそまさにスカイネット。
ですが、危険視する嫌味な男たちはAIプロジェクトの破棄をもくろみ、少年少女たちはそれに反抗し、シオンをネットワーク内に逃がそうとするのです。
どう見ても子供たちのしている行動が恐ろしいと私は思いました。
一見すると、主人公たちが酷い大人たちの陰謀を阻止しようと後半奮闘していますが、現実問題としてこの現象は本当に危険であり、大人たちの理屈が基本的には正しいのです。
ですが、本作は大衆向けの映画ゆえにそのような解釈をしていません。
そのため、私はこの演出は長所でもなければ欠点でもない、問題点と定義したのです。
総括
本作は、AIロボットシオンによって、子供たちが救われる映画ではありません。
2人の子供によってたまごっち型AIがスカイネット化し、大人へのつまらない反発精神からスカイネットを救ってしまう映画です!
私はそう解釈しました。
だから、捻くれた精神の持ち主である私は、本作がかなり気に入っています。
ですので、本作の視聴を強くお勧めします。
そして、どのような映画なのか考えるべき映画であると私は思います。
ご視聴ありがとうございました。
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