青くて痛くて脆い 【ネタバレ】【感想】【映画考察】【劇薬】

映画考察

どうも。

今日盛岡に行く用事があったのですが、タイミング悪く映画を見ずに地元に戻ってきた野川太郎です。

今日は去年、オーストラリアから帰国した年に公開された映画【青くて痛くて脆い】の映画考察をします。

ネタバレ注意ですので、お気をつけください。

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予告編詐欺に注意!

この映画の予告編映像では以下のようなストーリーを紹介されていました。

主人公がかつて作った秘密結社モアイがリア充グループたちに支配され、今や就職活動のためのサークルと化していた。その組織をぶっ壊すために主人公が再び立ち上がり、かつてのサークルへ戻そう!

結論から言えば、これ全部嘘です!

では、本当のストーリーは一体何なのか? 私がざっくり説明しちゃうとこんな感じ!

かつて好きな女の子と一緒に秘密結社モアイを作った主人公。次第にメンバーが増え、いつの間にか陽キャグループと化してしまったモアイに居場所を見失い、去ってしまう。けれど、その場所と好きな女の子のことが忘れられず、その思いを見事にこじらせた主人公、逆恨み復讐劇

こっちが本当の内容です。

私は映画の予告編を見た時、「あ、この予告嘘だな」とすぐに気づきました。
映画視聴回数の多い方々なら気づくと思います。

陰キャコミュ障のこじらせ大学生が逆恨みをしてしまい、かつて自身が作ったサークルをぶっこわーす物語のため、この映画は人を選ぶ作品となっております。

この作品は誰向きか?

この作品は、陰キャ・コミュ障の学生(特に高校生と大学生)向けの映画です。

私も陰キャコミュ障系の人間なので、この映画を予告編が嘘だと気づきましたが、それ以上の衝撃を受けた映画です。

ですので、学生時代に楽しい思い出があふれる人やバリバリのリア充の方が視聴してもこの映画を理解(共感)することはできません。

逆に言えば、私のようなタイプの人が絶対に見なければならない映画であると言えます。

私は学生ではないので、手遅れですが(笑)、今学生生活を楽しんでいない人や苦しんでいる人はこの映画を絶対に見なければなりません。

でなければ、映画の主人公のような結末を迎えるかもしれないからです。

今後の人生の参考になる映画だと考えればいいです。

秘密結社モアイ結成の話(主人公の絶頂期)

先に話しておきますが、私の考察と映画の時系列はずれています。

映画では、就職活動を終えた主人公が、リア充就活サークルと化したモアイぶっこわーす流れから物語が始まります。

私は、先にモアイを結成した経緯からネタバレ・考察をしますのであしからず。

主人公は人と極力関わらず静かに生活しようとする典型的な陰キャ男子。
そして、本作のヒロインの女の子は空気が読めないけどポジティブな女子

大学で出会った浮いている二人が接近し、秘密結社モアイを設立します。

この作品の面白いところは、すでに二人の考え方に解離があるということです。

ヒロインは基本的に空気が読めないだけで素直な性格。
純粋にモアイと言うサークルを楽しもうとしています。

しかし、陰キャで素直になれず、本心が言えないコミュ障の主人公。
彼は【二人だけの秘密の場所の共有】に喜びを感じるのです。

二人は浮いた者同士という共通点以外、全く正反対の性格だったゆえ、モアイに対する考え方に違いが生まれました。

この作品の面白いところは、【互いにぶつかり合いながら学園生活を送る】という王道テーマから完全に外れている所です。

言ってくれなければ人の気持ちが理解できない社会性のあるヒロイン。そして、言わなくても分かるだろうと言葉にしないで気持ちを理解させようとする主人公。

二人だけのモアイでの活動が、主人公にとっての大学生活の絶頂期になります。

第3者の登場(主人公崩壊期)

陰キャは基本的に仲の良い人以外を極端に嫌います(私の心当たりあり)
ですので、外界から隔絶された俺たちにしか分からない俺たちだけの世界に固執し、憧れてしまうのが陰キャをこじらせた男子の宿命とも言えます。

だからこそ、二人だけの世界に居られる主人公はここまでは幸せだったはずです。

ですが、ここで第三者が現れます。

ここから、主人公の学園生活は崩壊へと向かいます。

第三者がモアイに参加することになります。
陰キャにとって第三者はとても危険な存在です。うまく馴染めばいいのですが、下手をすれば自分だけ抜けものになってしまうと恐怖するのです。

そのシーンも映画では細かいですが描かれています。

2人だけの幸せな世界はあっという間に崩壊へと向かいます。

ですが、これはあくまで主人公視点。

ヒロインは主人公の心情を全く理解していません。むしろ、モアイに仲間が増えてうれしいとさえ思っています。
ヒロインにとっては、モアイは別に二人だけの世界ではないのです。

主人公は自身の心情を決して口にはしません。
だから、ヒロインは主人公の苦悩を全く理解しません。

そもそも、ヒロインは空気が読めないだけ。主人公のような陰キャではないのです。

そして、主人公に止めを刺す出来事がありました。

第三者とヒロインが恋人関係にあることを知ったことです。

二人だけの世界を壊され、精神的に追い詰められる主人公。
主人公の学生生活の崩壊が加速する瞬間でした。

この勝手に追い詰められている主人公共感で来るかどうかで評価が分かれる作品です。
陰キャの人々ならこの主人公に共感と理解を覚えるはずです。
けれど、そうでない人にとっては「この映画は一体何なんだ?」と思うはずです。

モアイのメンバーが更に増加(主人公終了編)

モアイはもはや、主人公が理想とした世界ではありません。
そして、メンバーが更に増加していきます。

そして、集団では生きていけないのが典型的な陰キャの宿命

主人公は自身が作った世界でボッチになり始めます。

何か活動していても、主人公は一人で行動します。
一方ヒロインは色々なメンバーたちと意思疎通を図りながら行動していきます。

空気の読めないヒロインですが、さすがに主人公の様子が少しおかしいことに気づきます。
主人公に心情を確かめるヒロインですが、コミュ障の主人公は問題ないと言います。

コミュ障の主人公は彼女に「察してほしい」と思っていますが、ヒロインは「口に出して教えてほしい」と考える。

2人の思いは平行線というより、ねじれの位置と言った感じです。

普通の人がこのシーンを見ると、100パーセント主人公が悪いと思うでしょう。
それは正論ですが、正論では生きていけないのが人間の魅力であると私は思います。

陰キャ・コミュ障の主人公は素直になれない

主人公は勝手に自滅していくことになるのです。
そして、それが一つの誤解を生むことになります。

自分が辛い時にヒロインは自分を放置した、と主人公は思い込むようになるのです。
もちろん、ヒロインはそう考えてはいません。

また、主人公が孤立している状況を孤立と捉えないのがヒロインなのです。
なぜなら、主人公を孤立させようとしている悪意のある人がいないこと。

そして、主人公が不満を口にしないため、問題ないと判断してしまうからです。

また、主人公の状況を唯一理解してくれたのは、ボランティアで訪れていた施設の幼い女の子一人。

幼い女の子にすべてを見透かされる状況にはとても説得力があります。

このモアイと言うサークルは他人を見ていない。
ただサークルを活動を楽しんでいるだけの連中が増えていくばかりです。

主人公の心理を本当に理解してくれたのが施設の女の子だけなので映像越しに見る視聴者からは結構冷たい世界と捉えるか、自己責任でしょ?と捉えるかで評価が分かれるシーンだと思います。

結果的に主人公はモアイを辞めざるを得ませんでした。

モアイの破壊計画(主人公暗黒期)

モアイを脱退してからの主人公の生活は描かれていません。

それから1年以上経過した様子で描かれています。
就活が無事に終了した主人公はモアイをぶっこわーすことを決断します。

その目的は、モアイが完全にリア充サークルと化し、当初の目的であった世界平和から就職活動斡旋場に成り下がったことです。

そして、かつて理解し合っていたヒロインをリア充へと変えてしまったモアイへの復讐です。

しかし、ここが主人公が陰キャをこじらせてしまった決定的なシーンと言えます。

モアイは別に二人だけの世界ではありません。
また、彼女はリア充と化してしまったのではなく、成長しただけなのです。

成長しないで止まり続けた主人公、そして前進し続けるヒロイン

この対比がとても面白いと私は感じました。

主人公は今のモアイを【悪】と断定し、友達を半ばそそのかして二人で巨悪に立ち向かおうと画策します。

巨悪に立ち向かうとうヒーロー的行動に憧れを抱く友人。

ですが、モアイに潜入した結果、モアイは決して悪い場所でもなんでもないことに友人は気づいたのです。

しかし、主人公の被害妄想的活動を止めることはできません。

モアイが企業にサークルの生徒の個人情報を流していることが判明します。

これは確かに行けないことですが、サークル側にそのような悪意のある意図はありません。

個人情報を流していたモアイの学生は陽キャ型のコミュ障(映画で言及されています)

彼は良かれと思ってその行動をとってしまっただけなのです。

この陽キャ方のコミュ障がまたリアルで実際にそういう生徒を一人くらい目撃したことはあると思います。

モアイ崩壊(主人公とヒロインが再び出会う)

主人公は決断を迫られます。

モアイによる個人情報流出事件を公にするかどうか。

友人はモアイと言う場所が【悪でもなんでもないただのサークル】であることに気づき始めていました。

友人に止められますが、主人公は情報をSNSに投稿。そして、モアイの崩壊へと向かいます。

その後、主人公はヒロインと再会することになります。

この場面にはとても緊張感と現実感が入り混じっていました。

今から大げんかが始まる。

そして、ヒロインが主人公が情報をリークしたことをすぐに理解し、バトルが始まります。

ここでようやく互いに本音を言い合うことができました。

その結果、主人公は自分が何をしてしまったのか? そして、自分が今まで思い込みで行動していた事実を痛感させられるのでした。

ヒロインもまた、主人公のことをようやく理解することができ、とどめの台詞が飛んできました。

【気持ち悪い】

この言葉の威力や重みは主人公にとって計り知れないものです。

まさに【劇薬】です。

男子が女子に一番言われたくない言葉ですから(笑)

主人公の結末(後悔)

主人公は自分の行動がいかに空しく、愚かなことをしたか強く痛感し、同時に反省していました。

そして、彼は後悔するのです。

もし、つまらない思い込みがなければ、モアイを辞めずに残っていたら・・・・

そう、彼は貴重な学生時代を無駄にしたことをようやく理解したのです。

このシーンのおかげで、モアイを辞めてからモアイの破壊活動開始までの空白の時間を視聴者は容易に想像がつくことができました。

彼はモアイを憎み続けるだけの毎日を送っていたということです。

その日々がいかに無駄であったか、どれだけ無意味だったか。
主人公は激しく後悔します。

楽しい学園生活を送るチャンスを自分で潰してしまった後悔。
このシーンはとても切なく、ノスタルジック感が妙に出ていました。

普通の映画は楽しい学園生活を描きますが、この映画は王道ストーリーから対称の位置にいます。

この映画は誰も死にません。悲しむシーンは主人公の後悔だけです。

主人公の贖罪方法

主人公にとって最高の刑罰とは何でしょうか?

主人公はモアイを潰した原因が自分であることをSNS上にアップします。
デジタルタトゥーとして彼の映像は未来永劫残ることを彼は罰としました。

けれど、彼にとっての本当の罰はネットにさらされることではありませんでした。

【無視】

これが、彼に課せられた罰だったのです。

誰も彼のことなの気にしていない。モアイは解散させられることになりましたが、誰もモアイのことなの気にしていませんでした。

これが世間の解答だったのです。

彼が受ける罰は【無視】

この落ちを皆さんはどう思うでしょうか?

私はとても皮肉が効いていると考えています。

なぜ皮肉なのかと言えば、
彼自身が皆のことを外見や目先の行動だけで判断し、分かり合おうとしなかった
  =彼が皆を無視し逃げ続けてきたということだからです。

君の膵臓を食べたいとは対照的な作品

この映画の原作者は住野よる
君の膵臓を食べたの原作者でもあります。

そのため、陰キャ系の男子陽キャ系の女子を描いている両作品ですが、方向性が180度違います。
2作品を比べると、更に映画や小説を楽しめると思います。

この作品を君の膵臓を食べたいで表すならこうでしょう。

君の膵臓で登場した陰キャ系主人公が、膵臓の病気である陽キャ系ヒロインと出会わなかった世界線

私はそう考えます(笑)

主人公とヒロインはエンドロール移行どうなったのか?(予想)

主人公はすべてを理解し、残りの学生時代を送ることになります。

そこでヒロインの後姿を見た主人公は彼女へ向かって行くのです。

ここで映画は終了します。

皆さんはこの後、二人がどうなったと思いますか?

これは私の考察ですが、結局二人は仲直りしないで赤の他人として終わると予想しています。

その理由として、二人とも互いのことを理解していると勘違いしていたことは前文でも明らかです。
そして、最後の対面の時に互いのことをようやく理解することができました。
その結果、ヒロインは【気持ち悪い】と口に出したのです。

この気持ち悪いには色々な意味が込められていると思います。

私の考察では、気持ち悪いの中に【私が知っていた主人公ではなかった】という意味が込められています。
ヒロインにとって主人公は理解者ではなかったこと、それに対する嫌悪感と結論が【気持ち悪い】ではないかと私は結論を出しました。

ヒロインはもう主人公を友人とは思っていないという証明だと思います。

総括

私はこの映画は陰キャコミュ障をこじらせると自滅を招くというテーマを感じました。

とても強烈な映画で、この年に見た映画の中で一番心をえぐられた作品でした。

目の前にいる主人公と自分を重ねてしまいましたから。

学校で目立たない、窓際な生活を送っている人は一度見るべき映画です。

今日は以上です。

ご視聴ありがとうございました。

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